アジアの純真

タイのロックバンド、Moderndogが格好良くてハマっている。

日本で行われているタイフェスにも何度か出演しているし、もともと彼ら自身がフィッシュマンズの大ファンということで日本の音楽はかなり影響を受けているんだとか。ていうか彼らの過去作にはZAKや大野由美子も参加していて、まぁその辺に詳しい人には馴染みのバンドみたい。

 


บุษบา ModernDog

こういう、まんまニルヴァーナ!っていう曲もあるかと思えば、レディオヘッドフィッシュマンズに通じるポストロック的な楽曲もあるし、U2やコールドプレイみたいなメロディアスなロックナンバーも歌える。

 


สกาล่า (Scala) - Moderndog Official Music Video

この曲なんかは激ポップ。このPVにはタイを代表するアーティスト20人が、レーベルの枠を超えて参加しているのだとか。1分30秒~のメガネ+ヒゲの人が25hoursのボーカル、2分~の川崎宗則っぽいピアス+ヒゲがBodyslamのボーカルかな。他は分かんないや。

タイのバンドだと、2012年のFIFAフットサルワールドカップのオフィシャルソングを歌ってたSlot Machineも好きだな。


Slot Machine - เหนื่อยบ้างไหม (Nueai Bang Mai) Official Music Video

ギターリフと美メロ、ところどころにエキゾチックなフレーズが挟まれててドキドキする。

 

どの曲もApple Musicにアップされてて、いや良い時代になったもんです。最近はインドネシア、タイ、韓国、台湾、香港あたりのポップミュージックを聴き漁ってて、邦楽はちょっと放置気味。大森靖子のシングルとKANとBiSHのアルバムが良かったかな。

 

そういえば先月22日に山下達郎を観たんだった。昨今の「神」の乱用には眉間にシワを寄せたがる系男子なのですが、満を持して言うよ。神だった。僕達を楽しませるために存在しているとしか思えない。今回のツアーが発表された時に

さて、先日、山下達郎の全国ツアーがアナウンスされた。金さえ払えば日本のポップミュージック史上最高のライブパフォーマンスが見られる。こんなに約束された幸福は他にちょっと見当たらない。達郎も還暦を過ぎて、あまり考えたくはないけれど、やがて金をいくら積んでも見られなくなる時は訪れる。暴論を言わせてもらえば、あなたが山下達郎に何の興味を持っていなくとも、それでも見ておくべきだ、と思う。

分かりにくく書いたけど、つまるところ、誰か一緒に見に行きましょう、ということです。

 こういう文言をtwitterに投稿したのだけど、我ながらこの通りだと思ったな。デヴィッド・ボウイですら死ぬんだぜ。

ちなみに、一緒に観に行った女の子が終電をなくしてしまったので静岡県浜松市から東京都江戸川区まで4時間かけて車で送ったのだけど、別れ際に「ほっぺにチューして」と冗談めかして頼んだら普通に断られたので泣きながら帰ったよ。来た道を3時間かけて。あの日からずっと僕はまるで抜け殻さ……

最近聴いてる音楽

ここ数日、韓国のインディーズ音楽を多く取り扱っているMirrorball MusicというレーベルのYoutubeチャンネルを漁っている。結構なボリュームがあって、ここ数ヶ月間のアップロード分くらいしか追えてないんだけど、特に気に入ったのをいくつか。

 


[M/V] Sung Huh - To Be Sung

 


[M/V] Big Smoke - Vacancy (Feat. Kiana)

 


[M/V] YUB PROJECT - Today

 

ジャズあり、ヒップホップあり、エレクトロポップあり。どれもこれも衝撃的なクオリティ。でも再生回数を見る感じ、本国でも無名に近いんだろうか。それにしてはMVもかなり気合い入れて作られてる。

 


[M/V] Richard Parkers - Good Bye

 

これなんか、リチャード・パーカーズってネーミングからして最高だな。リチャード・パーカーってのは『ライフ・オブ・パイ』という映画に出てきたトラの名前なんだけど、表現者がその名前を引用するという行為そのものにシビれる。俺が新進気鋭のミュージシャンだったら絶対にこの名前付けたいわ。うわーそれ取られたか!って思っちゃうね。トラだけに。

 

邦楽ではサニーデイ・サービスとLUCKY TAPESの新曲が良かった。しかし、しばらくジャニーズの音楽を聴いて幸せな気分になれそうもないのが辛い。スマスマが始まる直前、「今まで見たことないSMAPを見てしまいそうで怖い」とツイートしたけど、そのまんまの結果になってしまったな。俺を連れてってくれよファンタスティポへ。

あけ おめこ とよろ

馬みたいな車と

車みたいなギターと

ギターみたいな女の子と

外国人みたいなおちんちんが

欲しい

 

というツイートをかえる王国のアカウントがお気に入りしてくれたのが俺の人生のハイライトだと思うのだけど、それはそうと、外国人(主に欧米)は仮性包茎がデフォらしいね。あと香川真司によるとパイパンにするのが一般的なんだとか。たしかに洋物とか見てると包茎パイパン多い。てことは……

そんなわけで、念願の外国人みたいなおちんちんが手に入りました。あけましておめでとうございます。不倫したり再結成したり解散したり結婚したり慌ただしい2016年ですが、今年もやらしくお願いします。自分の身内が亡くなった2週間後にデビッド・ボウイも息を引き取ったということで、なにか運命みたいなものを感じませんか?俺は感じません。つーことで今年は身内の葬式で幕を開けました。幕を開けたっていうか幕を下ろしたっていうか。いやしかし、自分より年上の親戚一同が揃いも揃って同じハゲ方で初笑いだったよ。不謹慎ですか?おちんちんと不謹慎でライミングできませんか?

 

最近はSuchmosの新曲に度肝を抜かれて何度も聴いてる。どっからどう見てもブレイクスルーの予感しかない。


Suchmos "STAY TUNE" (Official Music Video)

この『Virtual Insanity』のオマージュのためだけに造られたようなスタジオはどこにあるんだろうか。ボーカルの方は顔の雰囲気といいYONCEという名前といい、韓国にルーツがありそうな気がしないでもないね。

韓国といえば、シャムキャッツの夏目知幸が昨年のベストに挙げていたhyukohというインディーバンドがとても良かった。


[MV] hyukoh(혁오) _ Comes And Goes(와리가리)

サビの入り方でMaroon 5の『This Love』を思い起こす。韓国インディーはあまり詳しくないので、今年は色々と掘っていけたら良いな。

シャムキャッツ『TAKE CARE』

TAKE CARE

TAKE CARE

 

 2014年の傑作『AFTER HOURS』の続編的な位置づけとなるミニアルバム。少年っぽく無邪気だったり、ハッとするほどセクシーだったり、どちらにも立ち止まらないまま、ゆらゆらと無節操に行き来し続ける夏目知幸のボーカルが冴え渡る。街に暮らす市井の人々を表現した結果、歌声がどんどん中性的になっていったというのは実にロジカルでマジカル。

バスが来るタイミングがぴったり。日常に訪れる奇跡という、まさにシャムキャッツ的な演出だなぁ。メロディのメロウネスにも磨きがかかってるし、丁寧に紡がれたギターサウンドは「今時、まだギター使ってんの?」という某氏の発言への回答のよう。

 

3曲目の『CHOKE』が特に好きだ。ちょっと自分でもどうかと思うくらいリピートしている。サビのないAB構造。抑制の効いたアダルトなアンサンブル。ここぞというタイミングでのフルートの爆発力。こんなにフルートが効果的に響くポップソングはキリンジの『アルカディア』以来じゃないか。文句なく2015年ベストトラック。

 

相変わらず歌詞も良い。『WINDLESS DAY』のドラマティックなことは何も起こらないことのドラマティック性であったり

ねぇ 今日はどんなことあったの?
私はねぇ なんもない
風もなくて いい日だなぁって思ってた
とりあえず

盟友・昆虫キッズに捧げる曲と公言している『PM 5:00』のシラフな虚無感であったり

とても静かに飲み込まれていく
虫も眠り 次は僕ら?
3、4年じゃ何も変わらないって
ひろちゃんの言ったとおりになった

『落ち着かないのさ』『なんだかやれそう』の頃の無鉄砲な姿から、明らかに大人びていて、そこかしこに「終わり」を感じさせる。もちろん彼らが解散に向かっている、というニュアンスではなくて、むしろ「そのうち終わりが来るんだから頑張らないと」と腰を上げたようなポジティブな姿勢を垣間見ることが出来る。夢見る学生が社畜リーマンになったよう(最悪のメタファーだな)。まさに『GIRL AT THE BUS STOP』の

彼ったら
もう間に合わないってわかってるのに
息切らして走り出す 

というフレーズそのものだ。バスを追いかけて街を飛び出した「彼」が、次にどのような音楽を鳴らすのか。TAKE CAREして待ちたい。

十数年ぶりに『タッチ』を読み返してみた

めちゃくちゃ面白くて驚いた。何が驚いたって、自分自身が、上杉達也と同じくらい、あるいはそれ以上に柏葉英二郎に感情移入して読んでしまったこと。柏葉英二郎ってのは、おおまかに要約すると「ワイが高校生のときは野球部でイジメられて辛かったンゴ。だから監督に就任して高校球児たちをイジメてやるンゴ!ひたむきで明るい青春を送るリア充なんて爆発しろ!」っていうキャラです。昔は柏葉のことを憎々しく思ってたし、それはそれで面白かったのだけど、この年になって読んでみると柏葉の気持ちがすごく分かる。特に「リア充なんて爆発しろ!」の部分。ルサンチマンや嫉妬に起因する破壊願望に、めちゃくちゃ共感できてしまう。

青春を打ち壊そうと企む柏葉であったが、練習や試合を重ねていくうちに達也たちの情熱に徐々に感化されていく。そして須見工との県大会決勝戦で、とうとう彼は「通りすぎてしまった青春を、もう一度達也たちに託す」ことでルサンチマンを昇華しはじめる。すると達也は監督に向かってこう語りかける。

なくしたものをとりもどすことはできないけど、 忘れてたものなら思いだせますよね。───監督。

これは完全に僕へのセリフだ。達也の視線も明らかに読者の方を向いている。物語序盤で達也に感情移入しつつも、野球も恋愛もトントン拍子で進んでいく過程を見守りながら心の何処かで彼に嫉妬して柏葉にも感情移入してしまった僕。二律背反する感情が、柏葉と達也の邂逅により一気に同化する。このときのカタルシスといったら!

『タッチ』とは、上杉和也から上杉達也へのバトンタッチの物語であり、柏葉英二郎から上杉達也へのバトンタッチの物語でもあった。達也が「リンゴ」を渡した相手が和也でもなく南でもなく柏葉だったのが実に象徴的だ。

この程度の考察はググればいくらでも出てきそうな気がするけど、あまりに鮮やかに読み方がひっくり返ってしまったので、一種のマイルストーンとして記しておく。

僕は君のファンクラブメンバー

何を隠そう、小中高の7年間くらい、槇原敬之のファンクラブに入っていたことがある。シングル『STRIPE!』の初回購入特典ステッカーを当時使っていたペンケースに貼り付けていたら国語教師に「ストリップ?お前そういうの好きなのか」とからかわれたこともあるし、『LOVE LETTER』の歌詞よろしく徹夜で作ったマイ・ベストMD(MD!)を好きだった女の子に渡したこともある。若い世代は知らないだろうけど、1999年までのマッキーは星野源と夏目知幸と秦基博を足して割らないくらいのスペシャルな存在だったんだよ。ホントだよ。嘘だと思うなら青春ゾンビのヒコさんに聞いて確かめてみてよ。

槇原の最高傑作は?と問われれば『UNDERWEAR』を挙げることに躊躇はないけれど、個人的な思い入れの強さに関しては彼とのファーストコンタクトとなった『SELF PORTRAIT』一択。

SELF PORTRAIT

SELF PORTRAIT

 

近所の市立図書館で今作を借りてきた少年は、『君に会いに行く』の純朴な感情に、『No.1』の圧倒的な多幸感に、『Witch hazel』の切なすぎるメロディに、『MILK』の心に染み込む温かさに、『ズル休み』のセンチメンタリズムに、完全にシビれてしまった。『困っちゃうんだよなぁ。』の真面目な主人公なんて当時の僕自身そのもの。控えめに歌われるヒロイズムには随分と勇気を貰ったものでした。まさしく、どうしようもない僕に天使が降りてきた(今作には収録されてないけども)。ジャケットも羽が生えてるし。そういえば黒沼英之の『雪が降る』を聴いた時は「これは完全に21世紀の『雪に願いを』じゃないか!」と一人はしゃいだものです。あまりに嬉しくて『雪が降る』をYoutubeにアップロードしたら権利侵害でまんまと削除されたよ。

本当にアホほど聴いてたな。全曲ソラで歌えるアルバムって、これくらいじゃなかろうか。セガサターンの超名作『サカつく2』をやりながら、ひたすらにエンドレスリピート。今でもこのアルバムを聴くと『サカつく2』のロード画面が脳裏に浮かぶ。ちなみに山口百恵の引退コンサートアルバムを聴くとSFC版『ドラクエ3』のダンジョンが脳裏に浮かぶのだけど、それはまた別の機会に。

老婆の休日

『王になった男』などのシム・ウンギョンと『ハーモニー 心をつなぐ歌』などのベテラン、ナ・ムニが二人一役を熱演する心温まるファンタジー。70歳の老女が突然20歳の自分に若返ってしまったことから巻き起こる珍騒動を、爆笑と感動の涙で盛り上げていく。『トガニ 幼き瞳の告発』などのファン・ドンヒョク監督が、本作ではがらりと趣を変え新境地を開拓。キュートな容貌とは裏腹に、相手構わず罵声を浴びせる怖いもの知らずのヒロインの魅力のとりこになる。 

 一種のジャンルとも言える「若返りモノ」としてストーリーは明快。20歳のババアというギャップで笑わせるコメディ要素をふんだんに交えつつ、家族愛や人生とは何か、という根源的テーマに迫っていく。「チャ・ドゥリ?」のネタ、韓国では大ウケなんだろうな。日本ではサッカーファンしか分からないのが歯がゆいところ。

『サニー 永遠の仲間たち』で80年代当時の少女を演じたシム・ウンギョンが相変わらず素晴らしい。どう見ても中身ババアだなっていう演技と、ハッとするような少女の表情、そして代役を立てようという音楽監督の意見に強く反対したという彼女本人による歌声。


怪しい彼女OST「白い蝶」 シム・ウンギョンさん 


怪しい彼女から『もう一度』シム・ウンギョンさん

もはやシム・ウンギョンという女優のプロモーションビデオのようだ。『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』が奥菜恵のプロモーションビデオであったのを思い出す。あれは本人歌ってないけど。


Fireworks (best scene)

この破壊力。小学生当時、まさにブラウン管に釘付けになったのを覚えてる。

話が逸れたけど、唯一、残念だったのは序盤で提示される老人へのマイナスイメージの数々を払拭しないまま「若いって良いよね!」で終わってしまった感があるところ。せっかく主人公の息子に「老人問題を専門とする大学教授」というキャラ設定がされてるんだから、最後は彼に何か論じさせても良かったんじゃないかなぁ。