脳内フジロック行ってきた

はい。家から一歩も出ることなく、脳内フジロックでヘッドライナーの美空ひばりを観てきました。何を言っているのか分からないかと思いますが、とりあえずライブレポを上げときます。

 

いきなりこれで始められたら、そらもうブチ上がるに決まってるじゃんね。圧倒的な歌唱力とリズム感に裏打ちされた表現力の塊のようなショーマンシップ満点の幕開けに、苗場が揺れる。グリーンステージの中央、まさしく太陽のように燦然と輝くその姿に、フジロッカーたちは一瞬にして恋に落ちた。

勢いそのままに『お祭りマンボ』へと突入。「ワッショイワッショイ」のコール&レスポンスが響き渡る。チャーリー脇野とひばり&スカイによる演奏もキレッキレ。ステージに大きな神輿が登場し、観客のボルテージは早くも最高潮。隣で若い女の子が「これ山崎育三郎のカバーじゃん!」って言ってて笑った。

「本日は外国人のお客様もたくさんいらっしゃっておられますね」というMCから、ひばりの必殺ジャズメドレーが炸裂。英語を言語ではなく音として耳コピして歌い上げてしまう彼女の発音の滑らかさに外国人オーディエンスも拍手喝采。これで英語は全く喋れなかったって言うんだから驚きだよなぁ。

『東京ブギウギ』では歌詞の一部を「苗場」に言い換えるサービスも披露。全世界の老若男女が苗場ブギウギ。そして『リンゴ追分』や『悲しい酒』を情感たっぷりに歌い上げてからの『恋人よ』(五輪真弓カバー)の素晴らしい事と言ったらもう。

この低音の響きよ。ゾクゾクするな。ついさっきまで陽気に「テンツクテンツク」と歌ってたのと同一人物とは思えない表現力の幅広さにあらためて脱帽。

そんな表現力が遺憾無く発揮された『愛燦燦』が一部のラストナンバー。若い頃はなんとなくベタな曲だなぁと思ってたけど、それなりの年齢になってから聴くとこれがまたスッと心に染み入るから不思議だ。

アンコールは『柔』『川の流れのように』『人生一路』という鉄板の三曲。『川の流れのように』はもはや日本の『Don't Look Back In Anger』と言ってもいいのでは。


『人生一路』は(不測の事態に備えて会場外には救急車が控えるほど満身創痍の体でステージを演りきり、花道を歩き終えると同時に病院に緊急搬送された)伝説の東京ドームコンサートで最後に歌ったのが特に印象的で、個人的にもベストひばりソング。『終わりなき旅』の歌詞の一節

苦しくとも悲しくとも

終わりなきこの旅を歌で貫かん

という前口上から始まるのも実に粋だし、美空ひばりという人の生き様を最も表している曲だと思う。「胸に根性の炎を抱いて」という何気ないフレーズも、「胸に今生の」だったり「紺青の炎を」と読み替えることができたりして、これがまたニクいんだ。

ロックフェスティバルというのは非日常的な空間であって、それを楽しみに日々の生活を送っている人もたくさんいると思う。ただ、非日常のために日常が削り取られてしまっては何の意味もない。仕事を頑張る。買い物をする。知らないミュージシャンをチェックする。感想を誰かと語り合う。こんな風に何気ない日常を輝かせてこそ非日常というのは価値があるし、そしてそれは音楽の存在意義そのものだと信じている。

鳴り止まぬ万雷の拍手に見送られ、大団円で終演。ステージの照明が落とされ、帰りのシャトルバスの案内を告げるアナウンスが場内に流れても、まぶたに刻まれた閃光と魂を撼わす歌声が消えることはない。それはきっと俺のくすんだ毎日を鮮やかに彩ってくれるだろう。本当に素晴らしい音楽が鳴り響く場所というのは、フジロックのステージの上だとか、たいそうな音響設備を備えたスタジオだとか、そんなところではなく、そう、俺のこのちっぽけな頭の中なのだ。

 

  1. 真っ赤な太陽
  2. お祭りマンボ
  3. Lover,Come back to me
  4. Take the 'A' Train
  5. IT'S ONLY A PAPER MOON
  6. My Way(日本語詞)
  7. 終わりなき旅
  8. 裏町酒場
  9. 東京ブギウギ
  10. リンゴ追分
  11. 悲しい酒
  12. みだれ髪
  13. 恋人よ
  14. 愛燦燦

encore

  1. 川の流れのように
  2. 人生一路