aikoを聴き直さなくちゃ

シャムキャッツ『洗濯物をとりこまなくちゃ』が良い。


誰かのことを想ったり自分の身の回りのことをしたり、そういう何の変哲もない日常を歌わせたら当代随一じゃなかろうか。ドラマチックレスの美学。

 

それはそうと、「洗濯物」というワードでaiko『心日和』を思い出して、アルバム『夏服』を久々に聴いてみたところ、うっかりaiko熱が高まってしまい、結局、連休を費やしてインディーズ音源を含む全曲を改めて聴き直してしまった。

アルバム単位では『暁のラブレター』と『彼女』、楽曲単位では『アイツを振り向かせる方法』『アスパラ』『帽子と水着と水平線』『猫』『遊園地』あたりが特に好きだ。疾走感のあるギターナンバーや壮大なバラードよりもピアノがガチャガチャいってたりアンサンブルで聴かせるような曲が好きなのかも知れない。

aikoをよく知らない人の常套句「どの曲も同じに聴こえる」ってのは本当にその通りで、音楽的な引き出しは少ないんだよ。核となるバンドスタイルがあって、ストリングスが入ればバラードになるし、ブラスセクションを迎えればAORっぽくなるし、ディストーションギターが響けばブリティッシュになる。ある種の様式美。クレジットを見れば聴かなくても音が分かるレベル。ただ、分かるのは「音だけ」なんだよね。これにリズムとメロディが加わって「音楽」になると途端に予測不能になる。少ない引き出しなんだけど、開けてみるとめちゃくちゃ容積があって、とんでもないモノがゴロゴロ出てくる、そんなイメージ。

結論としては、この人、控えめに言って天才じゃないですかね。ちょっと引くレベル。アマチュア時代の椎名林檎がオーディション会場で大阪代表の柳井愛子を見て「なんだこのバケモン…」と衝撃を受けて高校を中退した、というエピソードは日本ポップス史でもかなりの重要事件だと思う。その後、林檎は引き出しをアホほど増やすことで別のバケモンになったのも感慨深い。