オンガク イツマデモ ツヅク オンガク

たとえばジャズという音楽が、リズムセクションを含めたバンドアンサンブル全体が揺れる=スウィングすることで人間性を表現するのに対して、テクノというジャンルは一般的にはそれと対極にある無機質な音楽と紹介される事が多い。しかし、俺が学生時代にYMOに熱中したのは、規則正しいビートによって逆説的に強調される彼らの有機的な部分だったように思う。高橋幸宏の歌声、大村憲司渡辺香津美のギターソロ、坂本龍一のアドリブ、それらは繰り返される正確なリズムの中で強烈な違和感として機能していた。


これを観て「テクノが無機質な音楽だ」なんて言う人間がいるだろうか。なんという圧倒的なグルーヴ。白魔術でもなければ黒魔術でもない、まさに黄色魔術=イエローマジック。ていうか、『1000 KNIVES』の冒頭16秒くらいのハイハットフィルインを皮切りに、最初から最後まで凄すぎて笑ってしまう。ある意味フュージョンのようだ。


坂本龍一の『Ballet mecanique』は生涯ベスト級に好きな曲だ。サンプリングされた機械音がループする構造的な美しさ、そして後半で爆発する鈴木賢司によるギターソロの破壊的なほどの叙情性(これすらも数テイクをサンプリングして繋ぎあわせてるらしいけど)。矢野顕子の詞も素晴らしい。無機質な日常に佇む自分自身を重ねて、中学高校時代は毎日のように聴いてたな。2014年に行われたオーケストラコンサートの音源も波間を揺蕩うような心地良いアレンジだけど、やっぱりオリジナルが最高。

余談だけど、数年前のドラマ『安堂ロイド』でキムタクがネット将棋をしていた際の作中ハンドルネームが「バレエメカニック」だったのは個人的に大興奮でした。もちろんフェルナンド・レジェの同名映画のほうが元ネタだろうけどね。