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シャムキャッツ『TAKE CARE』

TAKE CARE

TAKE CARE

 

 2014年の傑作『AFTER HOURS』の続編的な位置づけとなるミニアルバム。少年っぽく無邪気だったり、ハッとするほどセクシーだったり、どちらにも立ち止まらないまま、ゆらゆらと無節操に行き来し続ける夏目知幸のボーカルが冴え渡る。街に暮らす市井の人々を表現した結果、歌声がどんどん中性的になっていったというのは実にロジカルでマジカル。

バスが来るタイミングがぴったり。日常に訪れる奇跡という、まさにシャムキャッツ的な演出だなぁ。メロディのメロウネスにも磨きがかかってるし、丁寧に紡がれたギターサウンドは「今時、まだギター使ってんの?」という某氏の発言への回答のよう。

 

3曲目の『CHOKE』が特に好きだ。ちょっと自分でもどうかと思うくらいリピートしている。サビのないAB構造。抑制の効いたアダルトなアンサンブル。ここぞというタイミングでのフルートの爆発力。こんなにフルートが効果的に響くポップソングはキリンジの『アルカディア』以来じゃないか。文句なく2015年ベストトラック。

 

相変わらず歌詞も良い。『WINDLESS DAY』のドラマティックなことは何も起こらないことのドラマティック性であったり

ねぇ 今日はどんなことあったの?
私はねぇ なんもない
風もなくて いい日だなぁって思ってた
とりあえず

盟友・昆虫キッズに捧げる曲と公言している『PM 5:00』のシラフな虚無感であったり

とても静かに飲み込まれていく
虫も眠り 次は僕ら?
3、4年じゃ何も変わらないって
ひろちゃんの言ったとおりになった

『落ち着かないのさ』『なんだかやれそう』の頃の無鉄砲な姿から、明らかに大人びていて、そこかしこに「終わり」を感じさせる。もちろん彼らが解散に向かっている、というニュアンスではなくて、むしろ「そのうち終わりが来るんだから頑張らないと」と腰を上げたようなポジティブな姿勢を垣間見ることが出来る。夢見る学生が社畜リーマンになったよう(最悪のメタファーだな)。まさに『GIRL AT THE BUS STOP』の

彼ったら
もう間に合わないってわかってるのに
息切らして走り出す 

というフレーズそのものだ。バスを追いかけて街を飛び出した「彼」が、次にどのような音楽を鳴らすのか。TAKE CAREして待ちたい。