涙は虎に成り放たれた

SOUL'd OUTが解散発表「残念です」

なんだろう、彼らほど「好きであると大っぴらに公言することが憚られる」グループはなかった気がする。こっそり好きでした、みたいな隠れファンって意外と多かったんじゃないか。かく言う僕も20歳くらいの頃に『To All Tha Dreamers』とか『TOKYO通信~Urbs Communication~』を、こんなの好きだってバレたらライムスとかジブラさんのファン連中にフルボッコにされるわーと思いながらヘッドフォンでコソコソ聴いてたな。実に残念です。

 

1960年代初めのインド ポンディシェリで生まれた少年パイ・パテルは、父が経営する動物園で動物たちと触れ合いながら育つ。ところが、パイが16歳になった年、人生が一転する。 両親がカナダ モントリオールに移住することを決め、家族と動物たちは貨物船でカナダへ向かうのだが、太平洋のど真ん中で突然の嵐に見舞われ沈没してしまう。たった一 人、救命ボートにしがみつき一命を取り留めたパイ。しかし、そのボートにはリチャード・パーカーと名付けられた凶暴なベンガルトラが身を潜めていたのだった……。小さなボートと僅かな非常食、そして一頭のトラ。果たしてトラは少年の命を奪うのか、それとも希望を与えるのか!? かくしてパイと一頭のトラとの227日にも及ぶ想像を絶する漂流生活が始まった。

凄かった。ちょっとこれは生涯ベスト級。

観る前は「トラ萌えするサバイバル活劇かな~」とか思ってたんだけど(まぁその要素もあるんだけど)、もっとずっと深かった。なぜ人が、物語を、芸術を、哲学を、信仰を、あらゆる「嘘」を求めるのか、という根源的なテーマを、実にスマートな語り口とファンタジックな映像美で描ききっている。物語の暗喩構造が分かった瞬間、一気に鳥肌が立った。こればかりは劇場で3Dで観たかったな。これから観る人は絶対にブルーレイで、部屋の照明を落として観賞して欲しい。